「和解に代わる決定」とは?

「和解に代わる決定」というのは、民事訴訟法275条の2で定められた制度で、裁判所が、当事者間の和解の代わりに、請求の分割支払いなどの内容を定めるものです。確定すると通常の裁判上の和解を同じ効力を持ちます。この仕組みの特徴としては、裁判上の和解の場合と比べると当事者が出廷しなくてもできるため、手間がかからないこと(期日で行う場合は原告だけは出廷するのが一般的)、また、裁判外の和解と比べると不履行の場合に債務名義として強制執行ができる、ということが挙げられます。この仕組みは、民事訴訟法 「第八章 簡易裁判所の訴訟手続に関する特則」のところに定められており、簡易裁判所でのみ可能です。地方裁判所や高等裁判所などでは使えません。(もちろん、地裁、高裁でも通常の和解はできます)

この方法は、過払い金返還請求など消費者側が原告の事件でも用いられますが、ここでは、貸金返還請求など借り手が被告の事件を想定して解説させていただきます。消費者金融やカード会社(以下、「貸金業者」とします)から借り入れをしたりショッピング機能を利用していた場合に、支払が難しくなり、期限を過ぎてしばらくすると訴訟をされてしまうことがあります。そのような場合に、ご自身で、または、弁護士を代理人として依頼する等して、原告である貸金業者と話がついたとします。そこで、訴訟を取り下げてくれる場合もありますが、貸金業者としては再び支払いが滞った場合には給与差押などの強制執行をできるようにしておきたいという考えもあるでしょう。そのような場合、裁判上の和解をすることが考えられますが、その代わりに和解に代わる決定が用いられることも多いのです。上述の通り、和解に代わる決定だと両当事者がそろって出廷する必要がなく、比較的簡便な手続きだからといえるでしょう。

ただし、和解に代わる決定は、簡易裁判所でしか用いることができず、かつ、

  1. 金銭の支払の請求を目的とする訴えであること
  2. 被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合であること
  3. 裁判所が被告の資力その他の事情を考慮して相当であると認めるときであること

が条件であり、さらに、原告の意見を聞いた上で行うこととなっています。また、原告か被告の一方から異議が出れば効力は失われるため、あらかじめ当事者の意見を聞いて行うのが一般的です。(通常は事前に当事者間で概ねの内容を固めてから裁判所に上申します)
 また、条文上は、「第三項の期間の経過時から五年を超えない範囲内において、当該請求に係る金銭の支払について、その時期の定め若しくは分割払の定めをし(後略)」となっています。それゆえ、5年を超える分割の場合には、和解に代わる決定はできないとも読めますが、裁判所によっては5年を超える場合でも和解に代わる決定ができるとする運用を行なっているようです。

このように、簡易裁判所には和解に代わる決定という便利な仕組みがありますが、まずは当事者同士で合意に至ることが重要です。原告である貸金業者と直接やり取りするのは不安だという方は、まずは弁護士にご相談ください。弁護士が受任した場合には、ご依頼者様の代わりに貸金業者と交渉します。合意ができた場合の和解に代わる決定のための上申書の作成ももちろん、弁護士が行います。(また、事案によっては時効援用で解決できることもあります)

なお、最初の方に記載した通り、和解に代わる決定は確定すると裁判上の和解と同じ効力があり、不履行の場合債務名義となって強制執行される恐れもあるので、和解に代わる決定で支払いが定められた場合は、定められた内容に従って支払っていくことが重要です。

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