任意整理では支払いが困難と思われる場合、どういう方法があるか?
任意整理のメリット
任意整理は、和解後の利息をゼロにできる、月々の返済額を交渉で決めることができる、というメリットがあります。しかし、グレーゾーン金利での取引がない場合は元本は減らないこと、月々の返済額を減らせると言っても限界があること(債権者がどの程度の長期分割に応じてくれるかは状況次第)、から、月々の収入が少ない場合には、任意整理が難しいこともあります。その場合、債務の問題を解決するにはどういう方法があるでしょうか?
自己破産について
自己破産は、支払不能の状態にあるときに裁判所に申し立てて行う手続きで、自ら申立てる場合にこれを自己破産と言います(それ以外に債権者申立てというものもありますが、個人の場合はめったにありません)。
自己破産のメリットは
- 免責が認められれば債務がすべて消える(税金や養育費などの非免責債権を除く)
ことにあります。したがって、破産手続き自体にかかる費用を捻出できれば、返済に充てるための資金がなくても問題ないわけで、収入が少ない場合における生活の再建のために適した手続きと言えるでしょう。
ただし、以下のようなデメリットもあります。
- 資産があれば原則として換価されて失うこととなる(少額の預貯金や身の回りの品などの自由財産を除く)
- 警備員や保険の外交員など一部の職業の制限がある(開始決定から免責の確定まで。免責が下りなければ10年間)
- 全債権者を対象にしないといけない(したがって、自動車ローンや知り合いからの借り入れだけを除くというようなことはできない)
- 官報に氏名と住所が掲載される
したがって、破産手続きをするかどうかは、メリット、デメリットを充分に検討する必要があります。
特に、持ち家などの不動産は基本的に失うことになるため、持ち家がある方の場合は特に慎重に検討する必要があります。また、未分割の相続財産も換価対象になるので相続財産がある場合も注意が必要です。
民事再生
個人向けの民事再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生があります。いずれも裁判所の手続きを経て債務を減額する仕組みであり、条件が整えば5分の1まで減らせる場合もあるなど、大幅に債務を減額できる可能性があるのが特徴です。債務の減額の割合ですが、例えば、債務額が500万円の場合100万円まで減らせる可能性があります。減額後の返済は、3年が標準ですが、最大5年での返済が認められる場合もあります。
また、住宅ローンを払い続けることで持ち家を維持するという仕組み(住宅資金特別条項)が存在するので、一定の条件を満たせば持ち家を残すことも可能であり、それゆえに再生を選ぶ方も多いです。
なお、一般の債務(住宅ローン以外の債務)をどの程度減らせるかということについては、以下の基準によることとなります。
1.最低弁済額基準
債務総額 | 減額後の額 |
---|---|
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円以上1500万円以下 | 5分の1 |
1500万円以上3000万円以下 | 300万円 |
3000万円以上 | 10分の1 |
2.清算価値基準
仮に破産手続きを取った場合に換価対象となる資産の合計額を下回ることはできない
3.可処分所得基準
可処分所得の2年分を下回ることができない
とされています。小規模個人再生は①最低弁済額基準と②清算価値基準を満たせばよいですが、給与所得者等再生の場合はそれらに加えて③可処分所得基準も満たさなくてはなりません。
したがって、例えば、債務額が500万円の場合最低弁済額基準だと100万円まで減らせるはずですが、資産が300万円あれば清算価値基準を満たす必要性から少なくとも300万円を支払う再生計画にしないと認められないわけです。
このように民事再生には、
- 一定の条件を満たせば住宅(持ち家)を残すことができる
- (住宅ローン以外の)債務を大幅に減らせる可能性がある
というメリットがあります。
一方、
- すべての債権者を対象にしないといけない
- 官報に載る
というようなデメリットは破産の場合と同じです。
また、小規模個人再生の場合は債権者数の半数以上または債権額の過半数の異議が出ると認可されません。また、再生計画の履行可能性がない場合も認められないので、簡単に言えば、返済のめどがあることも条件となります。
一方、給与所得者等再生は原則としてサラリーマンや公務員など給与所得者に限定した手続きであり、また、再生計画案策定に際しては可処分所得基準も満たす必要があるため小規模個人再生の場合より返済額が多くなる場合もあります。
このように複雑な手続きではありますが、住宅を残しつつ一般の債務を大幅に減額したい場合や、破産手続きによる職業の制限を避けたいという場合には、民事再生は適した手続きと言えるでしょう。
まとめ
以上のように、債務総額が大きい、月々の支払い可能額が少ない、等の理由で任意整理では解決が難しい場合、自己破産または民事再生が選択肢としてあります。それぞれ、メリット、デメリットがあるので、迷っておられる方は、まずは、弁護士にご相談ください。当事務所では、任意整理、自己破産、民事再生、いずれの手続きも多く扱ってきました。まずは、お電話か電子メールでご予約の上、ご来訪頂ければ、と思います。