任意整理の流れとポイント
任意整理を簡単に説明すると
任意整理とは、弁護士が債権者(消費者金融、カード会社、債権回収会社など)と交渉して、支払いの条件を変更してもらう手続きです。つまり、和解後の利息をゼロにする、5年分割60回で支払う、などと取り決めをするわけです。
なお、利息制限法を超える利率(グレーゾーン金利)での取引があった場合は、引き直し計算により、適法利率での残高を算出し、その結果、払い過ぎの利子がある場合は、過払い金返還請求をします。
任意整理の流れ
ご依頼いただくと、弁護士は、各債権者に受任通知(介入通知ともいう)を送ります。受任通知を受け取った各債権者は、債務者本人や職場などへの連絡が法律上できなくなります。また、各債権者は取引履歴(債権届、再建調査票、などともいいます)を弁護士宛に送ります。なお、本人への連絡の停止は介入後ただちになされますが、取引履歴の送付は1か月~3か月程度かかることが多いです。
取引履歴が届いたら、弁護士の事務所では、まず、グレーゾーン金利の場合は適法利率での引き直し計算をして、過払い金の有無を調査し、正しい残高を明らかにします。
それを経て、残高が残る場合は、弁護士から各社に対して支払い計画を提示しる必要があります。ただ、その前に、一度ご依頼者様にご来訪いただき、月々合計いくらで支払うか、という点を打合せします。そうして、返済原資を決めれば、あとは、弁護士と各債権者が交渉して、支払い計画を決めます。これを、和解といいます。
なお、依頼後、弁護士費用を分割でいただくのが一般的ですが、その間、基本的に、各債権者への支払いは止めておきます。そうして、債権者への支払いを止めておける数か月程度の間に費用をお支払いいただくのが基本です。そこで、債権者と和解をして支払いを始める時期については、費用の支払いの状況によっても左右されます。つまりは、基本は、費用を支払い終えてから、各債権者への返済が始めるように調整するわけです。
*訴訟をされている場合等、やむを得ず業者への支払いを費用が満額になる前に始めるケースもあります。
任意整理のメリット
任意整理のメリットとしては、
・今後の利息がなくなるため、結果として返済額が少なくて済む
・月々の返済額を交渉で決めることができる
ということです。
例えば、ある債権者に対する債務総額が300万円で、これまで月10万円返してたとしても、交渉で、月々5万円、合計60回で返済する、というような交渉をすることができます。
*なお、60回分割であれば和解できることが多いですが、時には48回まで、などもう少し厳しめの上限を伝えてくる債権者もあります。逆に、より長期での和解ができる場合もあります。
また、古い時期からの消費者金融やカード会社のキャッシング取引であれば、引き直し計算による減額や過払い金回収ができることもあります。(これは、民事再生や破産でも同様ですが、破産の場合は過払い金を回収できたとしても原則は管財人に渡すことになります)
なお、他の債務整理の方法である民事再生や自己破産と比べると
・一部の債権者を対象から外すことができる(例えば、住宅ローン、車のローン、知り合いなどの個人債権者、を対象外にすることができる)
・資産を換価する手続きではない(破産のように資産を失うということはない)
・裁判所が関与しない手続きなので書類の準備等が基本的に不要
・破産や再生のように官報で公表されるということがないので、第三者に知られることなく手続きができる
などがメリットといえます。
任意整理のデメリット
任意整理のデメリットしては
・信用情報機関に事故情報が登録される(いわゆるブラックリスト)ため、数年程度は借り入れやカードの作成が基本的にできなくなる
ことが挙げられます。これは民事再生や自己破産でも同様です。
また、他の手続きと比べると
・将来の利息はなくなるが、元本を減らす手続きではない(過払い等がある場合を除く)ので、家計改善の効果に限界はある
点は、欠点といえます。
それゆえ、債務総額や、家計の状況や、資産の有無、その他の事情を考慮し、民事再生や自己破産を選択することが望ましい場合もあるといえます。
まとめ
任意整理は、たしかに、他の債務整理手続き同様、信用情報機関の不利益な登録(いわゆるブラック)という問題はあります。しかし、介入する債権者を選べる(住宅ローンや自動車ローンを外せる、知人からの借り入れを対象にしない、など)、資産に影響しない、裁判所に行ったり書類を出したりする必要がない、などメリットも多いです。また、グレーゾーン金利での取引の時期があれば、減額や過払いも期待できます。
そういう意味では、メリットも多い手続きなので、債務額や家計の状況に照らして可能な場合は、まずは任意整理を検討するのが一般的です。
なお、借金の返済に困っているがどの手続きが良いかわからない、という場合も、まずは弁護士にご相談いただければ、と思います。そのような、手続き選択のところから、借金の問題に詳しい弁護士にご相談いただくことが可能です。