破産手続きにおける自由財産について
1,自由財産とは?
破産手続きにおいては、破産者の財産は換価の上債権者に配当されるのが原則です。すなわち、管財人によって売却などの方法でお金に換えられて、破産財団に組み入れられ、裁判所の配当という手続きで債権者に支払われることとなっています。それゆえ、破産手続きを行うと、資産は基本的に失ってしまうことになります。
しかし、日々の生活に必要な預貯金や現金、身の回りの品、まで換価してしまうと生活が成り立ちません。そこで、一定範囲の財産は手元に残せることになっています。これを自由財産といいます。
2, 自由財産の範囲は破産法上どのように定められているか
自由財産の範囲については、破産法34条3項が定めており、99万円以下の金銭、差し押さえ禁止財産、がこれに当たります。また、同条4項により拡張が認められたものも自由財産となります。
3, 自由財産の範囲に関する実務における扱い
まず、99万円以下の現金や、各種差し押さえ禁止財産は、34条3項により差し押さえ禁止財産となっているので、いずれの裁判所でも自由財産となるはずです。(ただし、直前に現金化した場合には、問題となる可能性があります)
それ以外だと、東京地裁では、個別に
- 合計20万円未満の預貯金
- 合計20万円未満の解約返戻金
- 20万円未満の価値の自動車
- 20万円未満の退職金(原則として8分の1にしたもの)
などを自由財産としています。これらは自由財産拡張申し立てをしなくても自由財産とする扱いですが、これを超える範囲でも自由財産拡張申し立てをして残せる場合があります。例えば、病気がちの人が保険を解約されてしまうと再度入るのが難しいという場合には20万円以上の解約返礼金があっても、自由財産拡張の申し立てをして、自由財産として認めてもらえる場合があります。ただし、その場合に、その解約返戻金額に相当する金額の財団組み入れ(分割等で管財人に支払い、換価対象とする)を求められる場合と、求められない場合があります。
これに対して、さいたま地裁川越支部では、現金、預貯金、解約返戻金、自動車、退職金の(原則として)8分の1、などの合計99万円までは自由財産の申し立てを行うと原則として認められ、それを超える場合は特に事情がある場合には認められる場合がある、という扱いになっています。
このように、裁判所により扱いが異なる場合があります。その他、積極的に希望したというより、管財人が換価を試みてもうまくいかなかったもの(例えば不動産の買い手がつかなかったもの)も最終的に財団から放棄されて、自由財産として残される場合があります。
4,自由財産の範囲内でも手元に残せないもの
自由財産の範囲内でも、手元に残せないものもあります。すなわち、その物に担保が付いていると、破産手続きのために支払いを止めたことで担保権が実行されてしまうため、手元に残せません。典型的には、ローンのために譲渡担保権が付いている自動車です。担保の対象となっている自動車は破産手続きのために支払いを止めた時点で債権者から引き上げを求められるため、通常、手元には残せません。
また、不動産について換価が難しくて管財人が放棄しても抵当権が付いていると、やはり競売にかけられて失うことになるでしょう。
5,自由財産拡張についても弁護士との打ち合わせが重要です
自由財産拡張の希望がある場合、事前に弁護士とよく打ち合わせることが必要です。もっとも、それぞれの裁判所で特に手続きなく認めることとされていたり定型的な拡張申立書で認められる範囲内であれば、正確に財産状況をお伝えいただければ、弁護士が必要な書類を作るので問題ないはずです。(少なくとも、当事務所ではそうしています。)
しかし、通常の範囲を超えて、例えば東京地裁で20万円を超える保険の解約返戻金について自由財産として認めてもらい解約を免れることを希望する場合、や、さいたま地裁川越支部で99万円を超える預貯金等を自由財産として認めてもらいたい場合、等は、理由等を詳しく述べる必要があります。それゆえ、依頼している弁護士にその財産を自由財産としないと生活に困窮する、など特別な事情を丁寧に説明して、場合によっては必要な資料を提出するなど、充分な打ち合わせと準備が必要です。
そこで、まずは、こういう事情でこの財産を残したい、ということを破産手続きを依頼している弁護士に詳しく伝えることが重要です。もちろん、当事務所でも自由財産拡張申し立てを行い認められた事例が多くありますので、ご依頼の際には、自由財産の拡張についてもご希望があれば、お伝えください。
※ただし、客観的に必要性があることが重要であり、また、その財産の性質や価値も考慮されます(一般に99万円を超えると難易度が上がります)。希望をすれば必ず認められるというわけではございませんので、その点、ご了承ください。