破産手続きで車の引き上げはいつ行われるか?
自己破産と自動車
自己破産では、管財人が債務者の資産を換価して債権者に配当することが基本です。そうすると、自動車も換価対象になりそうです。実際、一定未満の価値しかないもの(東京地裁だと20万円が基準)は自由財産とする扱いになっているので、その基準未満の額しかなければ、管財人による換価の対象とはなりません。
二種類ある引き上げとその時期
では、価値が低ければ必ず手元に残せるのでしょうか? 実は、そうとも限りません。なぜなら、所有権留保の問題があるからです。すなわち、ローンで自動車を購入すると、たいていは、完済まではローン会社(クレジット会社等)が所有者となるという規定になっているからです。これを所有権留保と言い、破産などで弁護士が介入すると、一括請求になって(これを「期限の利益喪失」と言います)、引き上げがされる仕組みになっています。
この場合は、引き上げをするのはローン会社であり、弁護士がローン会社に介入すると、すぐに連絡があるので、引き上げが行われるのは、ご依頼後すぐ、ということになります。もちろん、すぐと言っても、当日とか翌日とか、そこまで急がないですが、1週間とか10日とか、かなり短い間に引き上げになるのが通常です。そして、ローン会社では引き上げた車を査定して、その金額の分は債務から引いてくれることになります。もっとも、自己破産手続きで最終的には免責されるので、金額が減ってもあまり関係はないかもしれません。逆に車の価値のほうが残債務より大きい場合は、返金がなされます。その返金された額を何に使うか(使ってよいか)は、個々の場合によります。
このように、担保付きのローンの実行として引き上げられる場合は、依頼後速やかに車は引き上げられると考えておくと良いでしょう。
一方、残ローンがなくてこの段階で引き上げにならなくても、一定以上の価値があると破産管財人による換価の対象となります。その場合は、開始決定後に引き渡す形になると思います。もっとも、引き渡すのではなく、代わりにその価値の分を予納金として収めることで車を手元に残せる可能性もあります。この場合、手続きとしては、自由財産拡張ということになりますが、これについては、申立て後に管財人に相談することになります。そのような方法で手元に残せる可能性があるのは、あくまで所有権留保が付いておらず債権者による引き上げがなされなかった場合のみであることに注意が必要です。
車がないと通勤等が難しい場合
車がないと通勤が難しい、という場合もあるでしょう。職場か家が駅から遠い、出勤・退勤時間が夜中だから電車やバスが走っていない、など理由があると思います。そういう場合、車が引き上げになってしまったら、代わりの車を買ってよいのでしょうか?
実は、破産手続きを取る場合でも、車の購入自体は禁じられていません。ただ、ローンで購入してはいけないし、また、一定以上の価値がある車を破産手続き開始決定前に購入してしまうと、結局、管財人による換価対象になってしまいます。そこで、車が通勤や生活に不可欠の場合には換価対象にならないくらい安い車(中古車)を一括で買うという方法があります。
まずはご相談を
破産手続きをする場合に車がどうなるのか、悩んでおられる方は、まずは弁護士にご相談ください。事案に即して、適切なアドバイスを致します。