奨学金がある場合の破産で気を付けること
ここでは、奨学金の借り入れがある場合に破産手続きをとるに際して気を付けるべきことをまとめます。なお、ここでは、奨学金とは学生支援機構(旧:日本育英会)の奨学金を念頭に解説させて頂きます。
奨学金の特徴
奨学金には
- 主債務者は大学生や大学院生など学生である
- 親を連帯保証人、それ以外の親族を保証人とする場合が多い
- 機関保証の場合は保証人がいない
- 学費や生活費を賄うために借入額が多くなりがち
- 利率はゼロか低い
- 返済期間はかなり長期に設定されている
- 一定期間の返済猶予制度がある
などの特徴があります。
破産手続きにおける奨学金の扱い
奨学金も債務であることに変わりはないので、まだ完済していない場合は、必ず、申立書の債権者一覧表に記載しなくてはいけません。奨学金は公的な機関が債権者ではありますが、税金や保険料とは異なるので、免責が下りれば、対象に含まれます。すなわち、返済する必要がなくなります。
保証人への影響
本人について免責が下りても保証人の返済義務はなくなりません。そこで、本人が自己破産を決意して弁護士に依頼すると、弁護士から受任通知を受け取った学生支援機構は保証人、特に連帯保証人に請求する可能性が高いです。そうすると、連帯保証人と学生支援機構で協議して支払方法(分割にするかどうかなど)を決めることになります。
なお、連帯保証人が支払った場合、民法上、本人に求償できますが、本人が自己破産を行い免責を得ている場合は、それについても免責が及ぶので本人は求償請求をされても支払う必要はないことになります。
保証人がすでに死亡している場合
保証人、特に連帯保証人が死亡している場合、返済義務はどうなるでしょうか? 連帯保証人はたいていは父母のいずれかですが、父母が死亡するとご自身は相続放棄をしない限り相続人になります。その部分については混同して保証人としての義務は消滅します。しかし、他にも相続人がいると保証人としての地位が相続され法定相続分に従って保証人としての義務も相続することになります。
例えば、父が連帯保証人であり、母とは離婚していて、相続人が破産者本人と弟だけだった場合を考えてみましょう。この場合、法定相続分は2分の1ずつです。そうすると、自分の分については地位の混同が起きていますが、残りの2分の1については弟が相続します。すると、例えば奨学金の残債務が500万円あるとすると、連帯保証人の地位を相続した弟はその法定相続分である2分の1の範囲で義務を承継するので、250万円の支払い義務を負うということになります。
このように、保証人、特に連帯保証人が死亡していると、その相続人である親族にも影響が及ぶ恐れがあります。
機関保証の場合
機関保証の場合は保証人がいませんので、保証人への影響を考える必要はないです。そういう意味では、銀行やカード会社の無担保貸付と同様、債権者との関係だけが問題となります。したがって、免責を得られれば、特に問題はないといえます。
奨学金だけ先に返すことは不可
奨学金の残額が比較的少額の場合、保証人に請求が行くことで破産のことがわかってしまうのを避けたいと思い先に奨学金だけ返済すればよいと思うかもしれません。しかし、それは偏波弁済といって、行なってはいけないことになっています。なぜなら、そのように一部の債権者にだけ返してしまうと他の債権者との間で公平を保てないからです。
同様の理由で、奨学金だけ債権者一覧表に載せないで支払い続けるという方法も認められません。必ず、弁護士が介入して、他の債権者への支払いを止めるのと同時に奨学金の支払いも止める必要があります。
奨学金が主な原因の破産
奨学金は上記の通り、利率が低く、かつ、かなりの長期弁済なので、金額は大きくても月々の返済はそれほど大きくはならないように工夫されています。とはいえ、大学や大学院を出たけれども思ったほど収入が高い仕事に付けなかったり、転職を機に収入が下がったりして返済が厳しくなってしまうケースはあります。一時的であれば返済猶予を申し込むなど対処もできるでしょうが、長期的に見て返済のめどが立たない場合、自己破産を選択せざるを得ないこともあります。
この場合、借りていた奨学金を学費や生活費に充てたのであれば、他の条件も満たせば、同時廃止で通る可能性があります。一般の債権者だと債務総額が大きいと管財になるリスクが高まりますが、奨学金の場合、使途等を適切に説明できれば、債務残高が比較的大きくても、同時廃止で通る可能性も低くないと思います。
まずはご相談を
破産手続きについては、まずは弁護士にご相談ください。当事務所でも、奨学金の返済が困難になり破産に至ったケースを取り扱った経験があります。まずはお電話か電子メールでご予約の上、当事務所までご来訪ください。