相続放棄のメリットと限界

相続放棄とは？

相続放棄は民法で定められた制度で、家庭裁判所に申述することで行います。相続放棄が認められれば、放棄をした人は相続人ではなくなり、資産を引き継げないだけではなく債務も引き継がなくてよくなります。なお、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行わないといけないという時間的限界があり（期限の前に家庭裁判所に期間の伸長を求める仕組みはありますが、認められるとは限らないです）、また、期間内でも相続財産を処分（例えば遺産であるお金を使ってしまうなど）するなど一定の範囲内の行為をすると相続を承認したものとみなされ、相続放棄をできなくなる点に注意が必要です。

なお、期間については、亡くなったことは知っていたが資産も債務もないと思っていたところ後から債務があることを知った場合には、債務があることを知ってから３か月以内であれば可能という解釈もありますので、そのようなケースについては個別にご相談ください。

相続放棄をした場合の他の親族への影響

相続放棄をすると、放棄をした者は最初から相続人ではなかったことになるので、親族構成によっては、他の親族が相続人になることになります。例えば、被相続人（亡くなった方）に子が１名だけの場合、その子が放棄すれば、被相続人の親など直系尊属（簡単に言えば、先祖）が代わりに相続人になります。直系尊属がすでに亡くなっていたり全員相続放棄した場合には被相続人の兄弟姉妹が相続人になることになります。なお、兄弟姉妹がなくなっている場合はその子が代襲相続により相続人になります。

このように、ご自身の相続放棄が他の親族に影響を与えることもあるので、この点には注意が必要です。もちろん、他の親族のことを考慮せずに相続放棄を進めることも可能ですが、もし、親族に迷惑をかけたくないという場合は、あらかじめ、該当の親族にも相続放棄予定であることを伝えておいた方が良いでしょう。

相続放棄をしても残る責任

相続放棄をしたら、一切責任を負わずに済むのでしょうか？　実は、相続放棄後も一定範囲内で責任が残る場合があります。すなわち、民法第九百四十条は、　「相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」と定めています。相続放棄をしたとしても、相続放棄をする時点で占有していた不動産などがある場合は、自己の財産の場合と同様に管理をしないといけないことになります。もっとも、他の相続人がいればその相続人に引き渡すことで以後責任を負うことはなくなります。しかし、他の相続人がもともといなかったり他の相続人も全員相続放棄してしまった場合には相続財産清算人が選任されて引き渡すまで保存の責任を負うことになってしまいます。

もっとも、法改正により相続放棄の時に占有している財産に限定されましたので、以前と比べて問題になりうるケースは限られていると言えます。

保証債務について

被相続人名義の借り入れについて相続人が保証人（連帯保証人も含む）になっている場合、相続放棄をすると、主債務は相続しなくて済みますが、保証人としての支払い義務は消えないので、結局、支払いをしないといけないことになってしまいます。

また、被相続人が借りていたアパートなどについて相続人が保証人になっていた場合も同様で、被相続人による家賃の未払いや原状回復義務について相続放棄をしたとしても、保証人は保証人としての義務に基づき履行しなくてはなりません。

相続放棄については弁護士にご相談を

このように、相続放棄については、被相続人の債務を引き継がないで済むという点で相続人にとってメリットがある制度ですが、上記のように保証人としての債務までは消えないという意味では限界があり、また、他の親族への影響もありうるので、相続放棄について悩んでいる方は、まずは弁護士にご相談ください。弁護士にご依頼頂ければ、裁判所への申述（書類の作成と送付）はもちろん、戸籍謄本（全部事項証明書）等必要な書類の収集も代理人として行います。

なお、相続放棄は上記のように期限が短いので、検討されている場合はできる限り速やかにご相談ください。期限直前だと対応できない場合がございますので、ご了承ください。

当事務所では、これまで相続放棄の案件も多く扱ってきました。なお、相続放棄については相談だけなら無料なので、まずはご相談いただければ、と思います。ご相談ご希望の方は、お電話か電子メールでご予約の上、立川の当事務所までご来訪をお願いします。