法人破産はどのような流れで進むでしょうか?
ここでは、法人破産について、一般的な流れを解説します。なお、ここでは、基本的に、受任通知送付→債権調査→申立てという流れでいわばオープンに行う場合を念頭に置いています。(債権者等関係者に伝えないまま裁判所に申し立てる方法をとる場合については、別の機会に触れたいと思います)
1、相談
まず、破産手続きをするかどうか、するとしていつ始めるか、について弁護士にご相談ください。
法人破産の場合、事業の停止のタイミングが重要になってきます。その点についても弁護士と緻密な打ち合わせが必要です。
2、受任及び事業の停止
弁護士にご依頼いただくと同時に事業を停止していただくのが原則です。これは、資産の保全の必要性及び、債務を増やさないためです。
ただし、建設業者で仕掛工事がある場合には、コストと売り上げ(売掛金回収の期待)を考慮の上、完成させる場合はあります。
従業員がいる場合は、原則として、このタイミングで解雇せざるを得ません。未払い賃金と給与1か月分の解雇予告手当は本来支払う必要がありますが、支払えない場合もあります。その場合は従業員は未払いの給与については一定の条件のもと8割は公的な補償を受けることができます。それゆえ、会社側は速やかに手続きに必要な書類(給与明細等)を渡すようにする必要があります。
3、介入
弁護士が各債権者に受任通知を送り、弁護士が入ったことを知らせます(介入)。
これにより、各債権者から取引履歴(債権調査票)が送付され、それにより債権額を調査します。
なお、速やかに申し立てを行う必要性から、介入を行わずに申し立てを行うこともあります。
4、申立書作成
弁護士は、債権調査票(取引履歴)やご依頼者様から頂いた資料を基に申立書を作成します。
5、申し立て
裁判所に申立書を提出します。申し立てをするためには、上記4の申立書作成と資料の用意が終わっていることが必要ですが、同時に、弁護士報酬と裁判所実費、管財予納金の用意を頂くことも必要です。それゆえ、費用を分割で頂く場合は申立てまで比較的時間がかかることとなりがちです。一方、手元に資金がなくてもご依頼後速やかに売掛金を回収できる場合はそれを弁護士費用に充てる等で比較的速やかに進めることができることも多いです。
6、開始決定
裁判所は申立書を確認し、問題がなければ、開始決定を出します。これで正式に手続きが始まります。
この際に、裁判所は破産管財人を選任します。
ここで、申立書に不備が多かったり、不足している書類が多々あると開始決定まで時間がかかってしまう恐れがあります。それゆえ、至急申立てをしないといけない場合でも、できる限りしっかりとした申立書を作成し、書類もそろえる必要があります。ただ、どうしても提出ができない場合はその旨記載した報告書を提出する等で大丈夫な場合もあります。
また、管財予納金は管財人の報酬となるものなので、案件に応じてある程度の額が必要です。もっとも、これから売掛金を回収できるめどがある場合等は比較的少額でも通ることもありますが、案件が複雑なのに財団に組み入れることができるお金が少なすぎると、管財人報酬が不足することとなり、なかなか開始決定が出ないということもありえます。この辺りは、場合によっては、申立代理人と裁判所で申し立て後に調整し、申立人本人に追加での用意をお願いすることもあります。
7、管財人面談
法人の代表者は弁護士とともに管財人と面談して、ここに至った事情や状況を説明します。なお、管財人との面談は開始決定前に面談を行うこともあります。
破産管財人は、法人破産では、主に資産の換価を行いますので、その関係で、資産の把握や債務の関係について、質問がされるのが一般的です。
8、債権者集会
裁判所で債権者集会が開かれます。ここでは、裁判官が管財人から資産や債務の状況について報告を受け、今後の進行について決めます。債権者集会という呼び方ですが、債権者は来ないことも多く、その場合は、裁判官、管財人、代表者及び代理人弁護士により手続きが進みます。また、債権者が来るとすれば取引先や個人債権者のことが多いでしょう。営業中であった法人が急に営業を停止したような場合には取引先などが配当がどれくらいあるのかを知るために出席することもよくあります。一方、廃業して長く経つ法人の場合には、すでに配当の期待があまりないためか、債権者が出席することは少ないと言えます。
債権者集会は一回で終わることもありますが、債務や資産の状況の調査、換価(管財人による資産の売却)に必要な期間の関係上、2回以上行われる場合もあります。
なお、代表者の破産も申し立てている場合、最終の債権者集会に続いて免責審尋も行われます。
9、終結
財産の分配が終われば、手続きは終了します。法人はこれにより消滅します。また、分配する財産がない場合は、維持廃止という形で、やはり終了して法人は消滅します。なお、代表者の破産手続きも同時に行っている場合には、通常、代表者は免責という形で手続きが終了します(免責が許可されないケースはまれですが、免責を得るためには手続きに誠実に協力する必要があります)。
なお、以上は一般的な流れです。
かかる期間はまちまちですが、裁判所に申し立てをしてから、早いと2か月、一般には数か月、でしょう。
法人の規模が大きく資産も多かったり、債権債務関係が複雑だと時間がかかるケースが多いと考えられます。一方、すでに廃業して時間が経つ場合、小規模な法人で債権者も少ない場合、には比較的早く終わるように思います。ただ、申し立てまでの期間は緊急で行う必要性、費用の準備の状況、などによって異なるので、依頼から終了までの期間は、申し立てまでの期間の長短にも影響されます。例えば、必要な費用を長期の分割でいただく場合、それなりに時間がかかることになります。
必要な費用やその支払い方法に関することは、こちらを参考にして頂ければ、と思います。
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