法人破産における資産保全
なぜ資産の保全が重要な?
破産手続きは資産を債権者に公平に分配することで残りの債務を免除してもらう手続きです。もっとも、法人の場合は免責というわけではなく法人が消滅することで終了しますが、法人の消滅により債務は消滅し債権者は(保証人への請求は別として)回収をできなくなることになります。それゆえ、財産を管財人に引き渡すことは手続きの公平のために極めて重要なことなのです。
してはいけないこと
以上で述べたように資産は管財人に引き渡さなくてはなりません。それゆえ、申し立ての前に特定の債権者を優遇したり、債権者ではない人に資産を渡したりしてはいけません。例えば、親しい取引先や友人にだけ優先的に弁済をしたり、取締役に正当な理由なく資産を移したりすることは認められません。そのような行為をすると、管財人による弁済効果を否定されたり、責任を追及される恐れがあります。特には刑事責任を問われることもあるので、これらの行為は絶対に行ってはいけません。
起きるのを防がないといけないこと
積極的に資産を減らすような行為をしてはいけませんが、一方、法人破産の場合気を付けないといけないのは、対策をとらなかったがために資産が毀損されるという事態が起きやすいということです。すなわち、債権者により店舗にある商品や倉庫にある備品を無断で持ち去られるなどの不法行為が生じる恐れがあるということです。したがって、法人破産においては、管財人に引き渡すまで、破産者の側で鍵をしっかりかける、場合によっては見張りを立てる、などの方法で確実に管財人に引き渡せるようにしないといけません。
資産の減少を防ぐためにすべきこと
ほとんどの場合破産手続きをすると決めて弁護士に依頼する時点で営業を停止するわけですが、その後に資産が減少するを防がないといけません。そのためには、従業員を解雇する(退職してもらう)、電気やガスなどの契約は不要であればすぐ解除する、電話も解約する、オフィスの契約を解除する、など出費を防ぐための措置を速やかに行わないといけません。
また、売掛金や貸付金の確実な回収も重要です。弁護士依頼後、裁判所への申し立ての前は、代理人弁護士の口座に入金してもらうのが通常です。そのために、弁護士は各債務者に通知を出して、今後の入金を弁護士の預かり金口座にしてもらうようにお願いします。これは、法人の口座だと差し押さえや銀行による相殺が行われる恐れがあるからです。
なお、売掛金や貸付金で回収に難がありそうな場合は、弁護士は交渉や訴訟で回収を図ります。時間がかかりそうな場合は、そのまま管財人に引き継ぐこともあります。
まずはご相談を
法人破産は複雑です。したがって、専門家に依頼せずに行うことは難しいと思います。また、早めのご相談であれば売掛金を弁護士費用に充てるなど、手続き費用の準備も比較的容易だと思います。それゆえ、迷ったら、まずはご相談ください。