破産手続きの「依頼」と「申立て」は違うのですか?
はい、「依頼」と「申立て」は違います。
「依頼」と「申立て」の違い
破産手続きの「依頼」とは、弁護士に破産手続きを頼むことを言います。一方、「申立て」とは破産手続きの申立書を裁判所に提出することを言います。したがって、これらは異なる概念です。「依頼」は債務者の方が弁護士に委任すること、「申立て」は債務者の方が(代理人弁護士を通すか、依頼していない場合は自分で)裁判所に手続きの開始を求めること、と理解すればよいでしょう。
「依頼」から「申立て」までの間
「依頼」をした段階では、まだ法律上、破産手続きは始まっておらず、債務者は法律上の破産者にもなっていません。ただし、破産法上、依頼に伴い弁護士が各債権者への支払いの停止を通知することは「支払い停止」ということで意味のある出来事ではありますが、裁判所はこの段階では手続きについて関わっていないです。
「申立て」をすることで、事件番号が付いて、裁判所の手続きに移行します。もっとも、申立て後正式に手続きが始まるのは開始決定が出たときですが、申立てにより裁判所の手続きという段階に移行すると言ってよいでしょう。
では、「依頼」から「申立て」までの間はどういう状態にあるのでしょうか? まず、債務者は債権者への弁済を止めなくてはなりません。債権者の公平のため、どの債権者にも支払ってはいけないのです。また、依頼により弁護士が代理人として各債権者に受任通知を送るので、支払をしなくても、消費者金融やカード会社などの各債権者は本人に直接の連絡はしなくなります。
もっとも、この段階では、まだ破産手続きは始まっていないため、債権者は訴訟を起こして判決を得て給与差押えなどの措置を採ることはできます。弁護士が介入していればすぐには訴訟をしてこない債権者が大半ですが、あまり長く待たせるとリスクは高まるので、早めに進めていくことが重要です。
「依頼」をしても「申立て」をしていない段階ではまだ裁判所は関与していないので、破産手続きで「依頼」をしていても「申立て」前であれば方針を変更して任意整理や民事再生に切り替えるということもできます。(もちろん、任意整理や民事再生で成功する見込みがあることが前提ですが)
申立てをすると?
「申立て」をすると、破産開始の要件を満たしていれば、「開始決定」が出て、正式に手続きが始まります。開始決定が出た後は、もはや取り下げはできません。破産申立人は破産者として裁判所の手続きに協力する義務を負いますが(ただし、同時廃止の場合は手続き開始と同時に破産手続き自体は終了になる)、最終的に免責審尋が行われ、免責決定が下されると、債務の支払いをしなくてよくなります。
まとめ
個人の自己破産は免責を得て生活を再建することが目的だと思います。そこで、「依頼」するだけではなく、「申立て」、そして、「免責」が下りるまで、代理人弁護士に言われたことや裁判所・管財人の指示を守り、手続きに協力していくことが重要です。書類の記入や収集、案件によっては管財人との面談、などそれなりに手間のかかることもありますが、債務の問題を解決して生活を再建するために必要な手続きなので、依頼したことで油断をせずに最後まで手続きに協力頂きたいと思います。