過払い金の請求について迷っている方へ
1.過払い金は今でも請求できるか?
過払い金の返還請求について、しばらく前によく聞いたという方も多いと思います。その頃請求しなかったので、もう遅いと思っている方もおられるかもしれません。では、本当にもう請求できないのでしょうか? 実は、それはケースによります。
2.過払い金の時効
過払い金返還請求権にも時効があり、消滅時効にかかってしまうと、請求は実質的にできなくなります。仮に時効にかかっているものを請求しても、時効援用されてしまうと考えられるからです。
では、過払い金は何年で時効になるでしょうか? 改正前の民法に基づく場合は、完済から10年となります。改正民法は消滅時効に関する分については令和2年4月施行なので、それ以前に完済している場合は、改正前の民法が適用となります。
一方、改正後の民法では時効が成立するのは、主観的起算点から5年、客観的起算点から10年、のいずれか早く到達する時点、とされており、少し複雑です。この記事を書いている令和5年12月時点ではまだ改正法による消滅時効にかかっているケースはないですが、すぐに請求しないで時間が経つとケースによっては関係してくる可能性があります。なお、この記事では、以後、改正前の民法の適用を前提に記載します。
3.それ以外の理由で請求できない場合
返還請求をする相手となる貸金業者がすでに法的整理(破産や会社更生などいわゆる倒産)を終えている場合は、原則として請求できません。手続き途中の場合は、債権届の提出期限までに提出すれば配当という形で過払い金が戻ってくる可能性はありますが、たいていはかなり低い比率となってしまいます。
また、法的整理に入っていなくても、貸金業者がすでに貸し付けを停止している等で資産がほとんどなく、請求がうまくいかない場合もあります。このようなケースでは、裁判を行えば勝訴判決は得られるのですが、その後、実際に支払いを得ることが困難な場合があります。
4.過払い金返還請求は急ぐべきか?
上記のように、過払い金には時効があります。そして、いつ完済したかということがあいまいな場合、念のため早めに請求することをお勧めします。時効になってしまうと請求できなくなってしまう(請求しても時効援用されて返してもらえなくなってしまう)からです。どのように請求すればよいかわからない、という方は、まずはご相談ください。
また、途中でいったん完済して、再度取引を再開して、また完済している場合、途中完済の前後で別の取引とされてしまい前半の取引の過払い金は前半の取引の完済から10年で時効になってしまうという場合は珍しくありません(「分断計算」)。ただ、空白期間があれば必ず分断計算というわけではなく、基本契約が同じで空白期間も短いと一連計算が認められることが多いですが、逆に空白期間の前後で基本契約が異なる場合は基本は分断計算となると考えられます。
さらに、改正前民法では完済から10年で時効になるのが原則であるところ、ケースにより、過払い金が発生した各回の返済から10年で個別に時効になるという主張がされることがあります。例えば、貸付停止措置が取られていた場合に充当合意が失われていたとして、各回の返済から10年で時効になるという主張がされることがあります。もちろん、必ずしも業者側の主張が通るわけではないのですが、仮に業者側の主張が通ると、完済から10年経っていなくても大部分の過払い金が時効となってしまい、過払い金が大幅に少なくなってしまう恐れもあります。もっとも、この論点について業者側の主張がそのまま通ることは少ないですが、交渉において不利になる事情は少ない方が良いので、この点からも、早めに相談いただくことが望ましいといえます。
5.過払い金請求は完済前と完済後どちらに行うのが良いか
過払い金返還請求は取引中でもできます。ただ、残高がある場合、払い過ぎた利息は元金に充当したとして計算し、それでも払い過ぎの利息が残る場合にはじめて過払い金として返還請求ができることとなります。逆に言えば、残高がある場合、利息制限法の上限を超える利率での取引があったとしても残高が減るだけで過払いの状態にまでは至らないこともあります。もちろん、残高が減ることはメリットですが、この場合は残高を分割で返済していくことになり、任意整理となります。したがって、信用情報機関にその旨登録されると思われます。
一方、完済後の過払い金返還請求であれば、信用情報機関への登録は行われません。つまり、いわゆるブラックにはならないわけです。
ただ、同じ業者(カード会社等)でショッピングなど別の取引があれば、過払い金と残高とを相殺しても残が残る場合、やはり、任意整理という扱いになってしまいます。それゆえ、同じ業者の別取引でも残高がないかは確認した方が良いでしょう。
なお、完済まで待って請求する方法には、完済するまで時間がかかってしまう、ショッピング取引の完済まで時間をかけているうちにキャッシングの完済から10年経過してしまい時効になってしまう恐れがある、など、問題もあります。先ほど少し触れた、個別の返済から10年で時効という主張に従うと取引中でも初期の過払い金が時効になることはありうることになります。取引の分断がある場合に、前半の取引の完済から10年経過してしまい前半の取引による過払い金が時効になってしまう、という場合もあり得ます。
もっとも、このあたりの議論はややこしいので、迷ったらまずは弁護士にご相談ください。
6.まとめ
以上のように、過払い金については、時間が経つと時効になってしまいます。時効の計算方法は法改正の前後で異なり、また、ケースによりどの時点を起算点とするか(どの時点から数えるか)、などが異なりえますが、いずれにせよ、どこかの時点で消滅時効にかかってしまいます。改正前の民法が適用される場合、原則は完済から10年ですが、取引の分断、時効の個別進行の主張、など論点もあり、必ずしも最後の返済から10年経たなければ大丈夫、とは言えません。また、いつ完済したか記憶があいまいという方も多いと思います。
それゆえ、過払い金返還請求について迷っている方は、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
7.ご相談
多摩中央法律事務所では、2009年の開設以来、多くの過払い金返還請求案件を扱ってきました。交渉、訴訟とも多くの経験があり、分断計算、時効の個別進行(充当合意の消滅)、悪意の受益者、など様々な論点にも慣れています。
当事務所では、過払い金については相談だけなら無料、ご依頼の場合も完済後のご依頼の場合、弁護士報酬は着手金不要で全額成功報酬(過払い金回収時にその中から頂く方式)となっています。
すでに資料がなくても、業者名(取引していた消費者金融やカード会社の名前)がわかれば、当事務所が取引履歴を取り寄せるので、問題ありません。
*すでに廃業している等の理由で履歴の取り寄せ及び過払い金請求ができない場合もある点はご了承ください
ご相談ご希望の場合は、まずは、お電話か電子メールでご予約ください。当事務所は、平日は10時~21時(電話受付:10時~19時)、日曜は10時~19時(電話受付:10時~19時)まで事務所を開けています。平日昼間お忙しい方も、ぜひ、ご相談ください。