1、過払い金返還請求権も債権である
消費者金融やカード会社と高い利率で取引をしていた方が過払い金の返還請求をしないまま亡くなってしまった場合、過払い金返還請求権はどうなるでしょうか? この点、過払い金返還請求権も債権なので、遺産として相続の対象となります。したがって、相続人が過払い金返還請求を行うことができます。
2、相続人が複数いる場合
過払い金返還請求権は可分債権であると考えられます。すなわち、過払い金返還請求権は、金額により分けて行使することが可能な債権です。可分債権の場合、「当然分割」といい、遺産分割協議をしなくても各相続人が法定相続分に基づいて債権を取得します。したがって、各相続人が法定相続分に基づいて、返還請求をすることができます。例えば、100万円の過払い金があり、相続人は被相続人の子ら2名だとすると、各々50万円の返還請求をカード会社等に対して行うことができることになります。
ただ、協議して、1名が全部を相続する、など、法定相続分とは異なる方法での相続をすることもできます。実際には、協議の上1名が全額を相続して請求するという方法がとられることが多いように思いますが、単独で請求するケースもあります。
3、具体的に相続人が過払い金返還請求を行うには
相続人が過払い金返還請求を行うには、まず、弁護士に相談、依頼すると良いでしょう。弁護士は各債権者に取引履歴の開示を求めて、送られてきた取引履歴をもとに適法利率での引き直し計算をします。それによって、過払い金の額と有無がわかります。相続人が1名の場合は、そのまま返還請求をすることができます。
相続人が複数名の場合は、依頼者ご自身の法定相続分に相当する分はそのまま返還請求できますが、もし、他の相続人の分もまとめて請求したい場合は、自分がその分も相続するということを示す遺産分割協議書等が必要となります。また、いずれの場合も、相続人の範囲を明らかにするために被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本(原戸籍等も含めて)が必要になります。すなわち、まず、戸籍を調査することで誰が相続人であるかを調べる必要があります。そのうちの1名が全額を請求する場合は、その1名が過払い金返還請求権をすべて取得するという内容の遺産分割協議書を作成する必要があります。また、自身の法定相続分だけ請求する場合も同様に戸籍をさかぼのって取得することで相続人の範囲を調べ、それにより請求者自身の法定相続分を明らかにする必要があります。弁護士にご依頼の場合は戸籍の調査も弁護士が行うことができるので、ご安心ください。
4、時効に注意
過払い金返還請求権は、一連の取引の最終取引日から10年で時効になります。途中完済があると、取引の分断があるして、それ以前の分は途中完済の日から10年で時効になるとされる場合もあります。その他、特殊な事情で各返済日から10年で時効とされる場合もないわけではなく、いずれにせよ、時効という期限があるところ、相続の場合、いつまで取引していたか相続人が把握していないことも多いので、特に要注意です。思い立ったらすぐに弁護士に相談することがお勧めです。
*なお、令和2年4月1日以降の取引については改正民法が適用され過払い金の存在を知ってから5年で時効になる(主観的要件)とされる場合もあり得ます。今後注意が必要です。