1、古い取引だと多額の過払い金が発生することが珍しくないが
古い取引だと多額の過払い金が発生することが珍しくありません。これは、昔のほうが利率が高かったこと、長い期間に返しすぎた利息が多くなりがちなこと、によるでしょう。しかし、いくら計算上多額の過払い金が出ても、時効になると返してもらえなくなってしまいます。
2、時効は原則10年だが
過払い金返還請求権は、原則として、最終取引日から10年とされています(改正前民法)。しかし、では、返し終わってから10年間は安心かというと、必ずしもそうはいえません。なぜなら、途中で完済がある場合にその前後で別の取引とされて前半の分は先に時効になるとされることもあり、また、1回払いの取引、貸付の停止、などの理由で過払い金の一部または全部が、完済から10年経つ前に時効になるとされる場合もあるからです。
特に、取引の分断はよく論点になります。空白期間の前後で基本契約が別だと原則は分断で、例外的に一連計算が認められる場合があるとするのが最高裁の考え方です。一方、基本契約が同じ場合は原則は一連計算が認められるべきという考え方もあるものの、下級審判例を見ると、基本契約は同じでも空白期間が長かったり、前半取引の終了時にカードを返却していたりすると分断計算とされてしまうこともあるようです。また、前半取引の完済時にまとめてある程度の額を返している場合も、分断計算とされやすいとも考えられます。なぜなら、そこに敢えて完済して以後取引をしないという意思を読み取ることもできるとも考えられるからです。このように分断計算とされてしまうケースも多いので、早めにご相談いただきたいと思います。
分断計算とされてしまうと、前半部分の過払い金は時効、後半部分は適法利率で結局過払い金の返還を受けられない、ということにもなりかねないので、分断前の部分が時効にかかってしまう前に請求をするということが重要です。いつ途中完済や契約の切り替えをしたかを正確にご記憶のケースは少ないと思いますが、まずはご相談ください。ご依頼頂ければ、取引履歴を取得して調査しますので、取引の内容をご記憶でなくても、まったく問題ありません。
なお、以上は改正前の民法を前提に議論してきましたが、改正民法が適用される場合は主観的起算点といって、過払い金の返還を求めることを知ってから5年という期限と、従来同様の10年の期限の、いずれか早いほうで時効になってしまうので注意が必要です
3、時効はどうすれば止められる?
時効の中断(改正民法では更新)には、訴訟の提起などの裁判上の請求が必要です。ただし、催告でも時効の完成を6ヶ月遅らせることができます。催告というのは、訴訟とは関係なく、相手方に対して内容証明郵便等で支払いを求めることを言います。
過払い金の場合に、金額を明確にして請求しないと催告とならないかは争いがあります。受任通知に「過払い金が発生している場合は直ちにお支払いください」というような文言を入れてあるのですが、金額の明記を求められるとそれでは催告として認められないことになってしまい、取引履歴の取り寄せの期間の分早めにご依頼頂かないと時効に間に合わないケースが出てきてしまいます。なぜなら、取引履歴を取り寄せないと正確な金額はわからないからです。幸い、現在は、受任通知に過払い金の返還を求める趣旨の記載があれば催告と認めるという高裁判例もあり、実務は受任通知による返還請求で、額はまだ明らかではなくても催告の効果を認めています。それゆえ、時効になる前にご依頼いただければ、受任通知で時効は6か月間完成を遅らせ、その間に交渉し、場合により提訴することで時効を中断(更新)するという方法が可能となっています。
とはいえ、この点についてはまだ争いがないわけではなく、念のため、早めにご相談いただきたいと思います。