民事再生案件における過払い回収
1,過払い金返還請求とは?
消費者金融やカード会社とのキャッシングの取引において、利息制限法の上限を超える取引をしていた場合、弁護士が介入すると、適法利率の上限での再計算をして正しい残高を算出することとなります。これを引き直し計算といいます。引き直し計算の結果債務残高が消えて逆に返還を請求できる金額があることが判明した場合、これを過払い金といいます。
過払い金は、消費者金融やカード会社等と2010年6月の法改正以前からキャッシング取引を始めていた場合に発生している場合があり、過払い金がある場合は、時効になっていない限り返還を請求することができます。なお、過払い金は現在約状残高がある場合も、完済になっている場合も、引き直し計算をしてみるとあることが判明することがあります。
*その貸金業者がすでに法的整理をしていた場合等返還請求ができないか難しい場合もあります。
2,民事再生における過払い金の扱い
民事再生(小規模個人再生または給与所得者等再生)をするための準備をしていて過払い金があることが分かった場合、その過払い金はどうなるでしょうか?
まず、前提として、民事再生をする場合は、グレーゾーン金利での取引があった場合必ず引き直し計算をしないといけません。なぜなら、民事再生を申し立てるためには、債務額及び財産の額を明らかにする必要があるからです。
まず、グレーゾーン金利での取引があった債権者について約定利率(債権者との間で定めた利率)だと債務残高がある場合は、利息制限法に基づいて引き直し計算をして正しい債務残高を算出することが必要です。引き直し計算の結果、債務残高がなくなり過払いの状態にあることが判明した場合は、債権者ではなくなるので債権者一覧に載せる必要がなくなります。(ただ、取引の分断などの関係で過払い金の有無に争いがある場合は、債権者一覧に残しつつ債務額ゼロと記載する場合もあります)
そして、過払い金の返還を当該貸金業者に求めることとなります。一方、もともと完済していた貸金業者についても可能性がある場合は必ず過払い金の有無を調査しないといけません。なぜなら、過払い金は資産であり、場合によっては清算価値に参入する必要があるからです。すなわち、民事再生においては、清算価値基準といって、簡単に言えば持っている財産より少ない額まで債務を減らすことができないというルールがあるからです。その関係で再生を申し立てる債務者の資産の額を明らかにする必要があり、過払い金についても調査する必要があることとなります。
さて、過払い金が判明した場合、いつ回収すればよいでしょうか? 理論的には過払い金を回収する前でも民事再生の申し立ては可能です。この場合は過払い金返還請求権は資産として清算価値シートに記載する必要があります。金額に争いがある場合は、裁判所や再生委員と協議しつつ記載額を決めることとなります。そして、その後過払い金を回収できた場合は、弁護士費用や実費を除き、再生債務者本人にお返しすることとなります。(個人再生の場合、破産のように換価する仕組みではなく、お手元に残すことができます)
一方、先に回収した場合は、状況に応じて預貯金または現金として清算価値シートに記載することとなります。もっとも、先に回収した場合は弁護士費用や手続きの実費の費用として使用しても基本的に問題ないと考えられ、その場合は残っている額だけを清算価値シートに記載することとなります。
3 まとめ
このように民事再生(小規模個人再生、給与所得者等再生)の場合も過払い金を回収できます。回収した過払い金は、債務者のお手元に残すことができますが、場合によっては清算価値に影響することとなるので再生計画案を定める際には注意が必要です。